小説書いた

毎日大遅刻する人がいるんですが
誰も何も言わないのは何故!ってポジションの人がいて、
ユウワン担当分のコーディングが終わり、多い人から分けてもらうことになったのですが分けてもらうのがその人。

他の人に任せる仕事振り分けしといてねって何日も前からリーダーに言われてたハズなのに、今日貰いに行ったら全然分けてねえ。
ソース見たら内容の出来はともかくまるっきり書き換えられてる…あのー、このプロジェクトにはコーディング規約というものがあってですな…

早く自分の仕事に戻りたいのかめちゃくちゃ適当な説明を受けた。えっとマジどこやればいいかわかんねえ。いくらCVS使ってるっていっても、適当にやって、ぶつかったらその分無駄な労力になるじゃんか。

今日はまだ手伝うの僕一人だけど、明日からもう一人加わるよ?そん時どうすんの?そうならないために振り分けが必要だったんじゃないの?

ってなわけでなんか体調悪いって言って何もやらずに帰ってきた。
ちなみにその人は業務知識豊富で仕事はできるが
知識豊富で仕事ができたら毎日大遅刻したり他の人とシンクロ率0%でもいいのかな!!!

例のごとくmixiで先行突撃。
テーマは明治大正との事ですがどうみてもアレの影響受けまくりです。時間があれば挿絵も描きたいが生憎ユウワンはそんなに器量良しでは無い。

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『・・・今日は天気は良かったのだが、その割に冷たい風が頻繁に通りを吹きぬけ、砂煙がきらきらと舞っていた。気持ちよく出掛けるには、少々不向きな一日であったかもしれない。
しかし今日で無ければ、次は何時晴れるのか見当がつかず、あまり心象の良いものではない。次の雨が過ぎれば、もう少し暖かくなりそうでもあったが』

「…いかん。自分の日記の方に力を入れ過ぎだ」

大通りから一本裏にある、とある下宿。吹き続ける冷風は、此処までは殆ど届かず、適度な空気の流れと、差し込む日光が部屋を暖めていた。
僕は日記帳を閉じると、原稿用紙の束を机の上に置いた。

「さて、昨日も同じ所で停まっていたのだっけ。どうしたもんかな、ここの書き出しは」

筆を泳がせたり、寝転がったり、そのまま寝てみたりした後、

「うーん…これはもう実際にやってみるか…。実際にやって何か閃いた事ないけど…」

さっきから独り言ばかりだ。机の引き出しから扇子を取り出し、広げると、部屋の隅に出しっ放しの枕に向かって投げつけた。扇子は開いたままなので、あらぬ方向へと飛んでいったり、そもそも、綺麗に宙を舞わす事すら難しい。予想外にも、何回も繰り返す事になった。

「困ったな…先ず枕の上に着陸するのが前提なんだが。まあ、難しいという事が判っただけでも収穫か」
「何子供っぽい事をしてらっしゃるんですか」

何時の間にか、部屋のフスマが半分開き、そこから女性が顔を覗かせていた。

「あ、大家の奥さん、こんにちは。すみません、気がつかなくて」
「枕に扇子をぶつけて、何が楽しいんですか。扇子が痛んでしまいますよ」
「いえ、これはこう見えて立派な大人の遊びですよ。それと、ぶつけているのではなく、枕の上に上手く、静かに乗せるのです。やってみればわかりますが、難しいですよ」
「へえ…って、何で私に渡すんですか。まあいいですけど、私の扇子じゃないし」

彼女はえいっ、という掛け声と共に投げるが、案の定うまく舞わず、その投げた手元に、貼り付くように落ちた。

「あら…気に入りませんね」

拾い上げ、再び投げ始めた。矢張り、自分でやるより、他人のを観察したほうが、全体の画を見れて良いと思った。

僕は物事を楽しむ事のできる人間が好きだ。職業柄、批評家な性質の人間と付き合う事が多いが、彼らは物事の全てに対して、いちいち完結してしまっていて、余裕があるように見えない。
物事を何でも楽しめるようになった方が、いよいよ人生を終える時に、「いままでの人生、楽しかった!」と思えるようになり、良いと思うのだが。
あれはこうだ、これは面白味の無い事だ、といちいち片付けてしまっては、最後に「つまらん人生だった」となってしまわないだろうか。
まだ若い時分から、涅槃に入る事を考えているのはどうなのかという意見があるが、しかし結局のところ、全ての経験はそこに収束するのではないかと思う。

「あ…ほらほら、乗りましたよ。何か戴けるのでしょうか」
「今のは無しでしょう。奥の壁に当たって跳ね返っていたじゃないですか。本来、これはもっと広い場所でやるものですから、壁は無いものと考えてください」
「あらあら、狭い部屋で済みませんね。ところで、お仕事の参考にはなりましたか…って、原稿用紙、殆ど真白じゃないですか。これは来月の支払いが心配ですね」
「最初がうまく書ければ、後は一気にいけますよ。まあ、これは書き溜めなので」
「また書き溜めですか。…私は素人ですから、あまり口が出せるものかわかりませんが」
「どうぞおっしゃって下さい」
「以前に書いていらした傾向の方が向いているんじゃありませんか。今書いている…その…声に出して読み難いものを書くようになってからは、筆がふるっているように見えませんが」
「声に出して読まなければいいのですよ。一度図書館へ行ってみればわかります。あそこは、声を出して読んでいたら注意されてしまうくらいです」

図書館に限らず、これからはどのような場所でも、本は無言で読む事が主流になっていくだろう。そして、それに合わせて、本に書かれる内容も多岐に渡ってくるはずだ。
今書いているものは、まさに大家の奥さんが言った通りの、『声に出して読み難いもの』だ。僕は今、体裁の良い言い方をすれば、この傾向に可能性を感じているし、純粋に書く事に愉しさを覚えているわけだ。

「…まあ、今は未だ不慣れもありますが、至らない点は把握しているつもりですので、段々と良くしていきますよ。それより、今日は何か用事が? 先月分の下宿代は納めましたが」
「今月分はまだですけどね。それより、ちょっと私の妹の事でお話が」
「僕に何か、役に立てる事がありますかね」
「はい、多分、貴方でなければ答えられないかと」
「へえ。ま、座ってください」

座布団を差し出した時、部屋の空気が冷えてきた事に気がつき、開けていた小窓を閉めた。通りの方も、ポツポツと人による灯りが点き始めていた。

「いえね。最近、妹が突拍子も無い行動をするんです。まるで貴方みたいにもの書きの真似事をしてみたり、話をしてみれば『姉さん、鬼は何故炒った豆が苦手なのか知ってる?』とか」
「鬼が炒り豆を嫌うのはですね」
「それはまた今度にしましょう。今は妹の話です。それで、今日なんかは妙にそわそわしていて、ふらりと誤魔化す様に出掛けたので、私、こっそりとあとを付けてみたんです」
「良い趣味です」
「何か悪い付き合いでもあるのではと心配しましたが、杞憂でした。どうやらいい人がいるみたいですね。今日はその方と、ずっと町を歩いていたみたいです」
「最後まで見ていたんですか」
「いえ、私も自分の用事がありますし、程々にして帰りましたよ。ただ、様子を見ていて、少し気になる事があったんです」
「気になる事ですか。男の態度が悪かったりしたのですか」
「二人とも楽しそうに話をしている様子でしたよ。声までは聞こえませんでしたが。でも、普通ああいう時は、どこかのお店に入ったり、なにかしらの目的地があったりしますよね。それが、町の中をあても無く歩き回っているだけのように見えたんです」
「それなのに、二人は楽しそうだった、と」
「ええ。後で妹に聞いてみたんですが、近くを散歩していただけだっていうんです。一緒にいた人の事は話してくれませんでしたが。せっかくの時間なのですから、上野の方にある、高い建物でも見てきたらよろしかったのに」
「なるほど。それもまた尤もな話ですね。僕は妹さんに助言した方がいいですね?」

僕がそう言うと、彼女はやれやれという様子で肩を落とし、こう言った。

「…もう、私の負けでいいですよ。全然悪びれた様子を見せないんですから」

彼女は立ち上がり、部屋の入り口へ歩いていった。僕もそれを見送るため、腰をあげた。

「外は寒いでしょうから、体を冷やさないよう気をつけてくださいね」
「わかりました。…妹の事、お付き合いするのでしたら、ちゃんと考えてあげてくださいね」
「僕は何時だって何にだって真剣に取り組む男ですよ」
「そうですか。では、下宿代もきっちり真剣にお願いします。では」

彼女を見送ったあと、日記帳を開いた。確かに今日は町をぐるぐると歩いていただけだったが、それでも楽しかった。僕は話をして彼女に聞いてもらう事を楽しみ、彼女は僕の話を聞く事を楽しんでいた。

確かに浅草まで行けば、凌雲閣があるし、他にもここには無いものを沢山見れたかもしれない。が、遠出をする事が楽しみの主になってしまえば、この町を楽しむ機会が減ってしまう。せっかくの晴れの日こそ、普段暮らしている場所を楽しめる方が、ずっといい。遠出ならば、別に晴れの日で無くても楽しめる。

楽しめる事は本当に身の回りにたくさんあるはずなのに、楽しみを自ずから見出す事を忘れてしまった人が多くなっている気がする。大家の奥さんは、きっかけがあれば楽しめる人なので、まだ大丈夫だが。

「…ううむ…また日記の方が捗っている…。いっその事、この日記を本として売り出せれば楽なのになあ」



月にうっすらと雲が被りはじめていた。

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さて、名前を付けるのが苦手なユウワンはこれにタイトルをつけていません。誰かいい案あったらどうかよろしくお願いします…